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自立
最近2年生の間ではもうすぐある修学旅行の話題で盛り上がってた。
その年によって行く場所は変わるらしいけど、今年は北海道に行く様だ。
「もう北海道雪降ってるかなぁ」
「さすがにまだだろー」
俺と直登も例外なく最近はその話題ばかりだ。藍斗とのことを告げてからは、何を話しても大丈夫って安心感があるから、俺は思ったままに話す。
やっぱり秘密があると所々で言葉を選んでしまうものだって思う。
「蒼井も修学旅行楽しみにしてるか?」
「んー、藍斗は集団行動自体が好きじゃないから、そんなんでもないな」
「まぁーそうだろうな」
うん。学校祭から藍斗が他の人に対して思ってた以上に冷たいってことはわかった。
でもせっかくの修学旅行だから今回は皆んなでも楽しくわいわいしたいなって言ったら
「あいつがわいわい皆んなと騒いでるの想像したらウケる!」
と直登に爆笑された。
俺も言ってはみたけど、ないだろうなと思う。
直登はよほどツボにハマったらしく、ちょっと落ち着いてはまたぶり返して笑い出す始末だ。
「直登だって修学旅行はどうせ上坂さんとラブラブするんだろ」
「ん、咲枝に自由時間は一緒にいようって言われた」
直登がふざける時は彼女の話題を出すと、すぐもじもじ話し出すから、それも俺からしたら面白い。
俺たちはこうやってお互いの恋人ネタでいじり合うことも増えた。
「これ終わったら俺も流石に勉強に力入れないとヤバいしな。幸太郎見習わないと」
俺の成績は着実に上がり続けていて、この前のテストでは上位30位にランクインするほどになったのだ。
それには俺自身がかなり驚いた。
学校では誰も俺に勉強ができるイメージを持っていないから、いろんな人に塾言ってるのかとか聞かれたけど、すべて藍斗のお陰だから皆んなには家庭教師ってことにしてある。
藍斗はというと俺に勉強を教えつつ成績トップを取ってしまうのだから、頭の出来が根本的に違う気がする。
「部活終わっても、受験勉強だし今のうちに咲枝と思い出たくさん作りたいな!」
「一緒に勉強すればいいじゃん」
「あっちは専門学校で推薦狙いだから俺とは状況も違うんだ」
「えっ、じゃあ…」
高校を出たら別れるのか?って口が滑りそうになって俺は言葉を止めた。
そうだ、何も同じ大学へ行かなくても恋愛は続けられるんだ。
どうした?って顔を直登がしてたから慌てて質問を変えた。
「いや、遠距離恋愛になるかもしれないかと思って」
「うん…俺の考えてる大学は他県だし多分そうなるだろうな。」
直登はそれでいいんだろうか?
せっかくできた彼女なのに。
こんなに大事にしてるのが伝わってくるのに。
「お互いの人生だからな。俺も自分の為の進路考えるし、向こうもそうして欲しい」
直登の言葉は、俺にとって雷に打たれた様な衝撃だった。
俺は当たり前の様に藍斗の指定した大学を目指していたけれど、直登ほどちゃんと考えていなかった気がする。
俺にとって難関な大学でも、藍斗ならもっと上の大学へ行けるはずだ。
俺は藍斗の人生の足を引っ張ってるんじゃないだろうか?
沸き起こったその疑問は俺の中でどんどん膨れ上がっていく。
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