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息子
「小学、中学と淡々とその日の出来事を話すだけで感情が欠けているんじゃないかと思う電話だったよ。電話自体義務的にしている様だったし。
それが高校に入って突然、私と妻の馴れ初めを聞かれたんだ。
自分でいうのも何なんだけど私は妻に一目惚れでね。それはもうがむしゃらに追いかけた。そんな話を熱心に聞いてくれたんだよ。」
お父さんは本当に嬉しそうにその時の事を思い出しながら話した。
「日に日に表情が豊かになってきてね、恋をしてるのがわかったよ。問いただしたら君の名前が出てきた。」
「え、それいつくらいですか?」
「高校へ入学してすぐだったと思うよ」
そんな前から俺のこと藍斗は知ってたのかよ。
俺はてっきり同じクラスになってからと思ってた。
「藍斗が君と過ごす為にソファやらテーブルを買ったって聞いた時は、藍斗の恋が叶ってよかったと私は本当に嬉しかったんだ」
俺はとりあえず「わぁ、そうだったんですね」と明るく返事するけど、いろいろ突っ込みどころのある話だと思う。
「だから全然反対はしていない。むしろ君の気持ちの方が気になって、今日は藍斗に席を外してもらった」
「僕ですか?」
「ああ、少しあの子の関心が君へ向きすぎている気がしたからね。君の負担になっていないかと思って。」
それならきっと、もう大丈夫だと思った。
俺は藍斗のこと大体わかってきているから。
「最近あの子はもう君との生活…人生っていったらいいかな。そこまで思考がいってしまっていてね。
どう収入を得るかや婚姻のことなんかも考えてる」
「同性じゃ無理じゃないですか?」
「日本はね。だから海外で永住権を取るかとか、婚姻の形にこだなくてもいいかとか言っていたよ。もう少ししたらそんな話を藍斗からされるかもしれない。」
「…僕が思ってたよりもすごいですね」
「ああ。でもそういうあの子も知っておいた方がいいと思ってね」
ちょっと俺が甘かった。
でもそこも藍斗らしいと思う。
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