俺たち

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俺たち

 その後もお父さんはお母さんの話を聞いて欲しそうな顔をしていたので、話を聞いていたらリビングのドアが開いた。 不機嫌な顔した藍斗が「まだかかるのか?」と出てきたものだから、俺とお父さんは顔を見合わせて笑う。 藍斗がさっさと俺の手を引いて部屋へ戻ろうとするとお父さんが 「幸太郎君、私は二人の味方だ。いつでも頼っておいで」 と言われて俺は「はい」って笑顔で返した。 お父さんは三者面談を終えてまた仕事先へ戻って行った。 藍斗に「寂しいか?」と聞けば 「毎日話してるんだ。寂しいわけないだろ」とキッパリだ。 お父さんは寂しんじゃないかと俺がぼやいていると 「父さんは俺が必要なわけじゃない。ただ俺は父さんが嫌いじゃない」と言う。 必要かどうかなんてそれこそ寂しい言い方だと思うけど、どことなくこの親子はお互いを理解し合っている気がした。 お父さんから聞いた藍斗の今後の企みは、俺はまだ知らないフリをしている。 藍斗がどう俺を計画に巻き込んでいくのかちょっと見てみたくなったからだ。 そして俺の三者面談は、まだ今の成績でもギリギリだけど、この調子で伸ばせていければ可能性はあるだろうということで、第一志望は反対はされなかった。 俺と母さんが教室を出たところで、面談があるから今日は家に行けないって言ってあったのに藍斗が現れた。 予期せず俺は母さんに藍斗を紹介する流れになったのだ。 「藍斗君のお陰で幸太郎もちゃんと勉強できる様になって助かってるわ。いつもありがとう。幸太郎は迷惑をかけてない?」 という母に 「いえ、幸太郎がいるから俺もがんばることができます」 と綺麗な笑顔で微笑んでみせたものだから、俺も母さんも思わず見惚れてしまう。 「冬休みは…よければよく泊まりに来てもらえると俺も寂しくないんですが…」 と目線を落として言う藍斗に、もう母さんは前のめりに 「いいのよ!もうずっと連れて行ってもらっても大丈夫。藍斗君もうちに遊びに来てね。」とすっかり藍斗を気に入った様だ。 家に帰ってからも「あんな素敵な子が幸太郎の親友なんて。あんた藍斗君を大事にしないとダメよ。」 とずっと言ってくるんだから相当だろう。 外見のいい奴の微笑みは強いと思う。
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