ジャージ

1/1
589人が本棚に入れています
本棚に追加
/51ページ

ジャージ

 やべ!ジャージ持ってくるの忘れてた。 朝学校に着く寸前で思い出したが今更だ。 「どうした?」 「直登〜!ジャージ2時間目貸してくれないか?俺うっかり忘れちゃった」 「ドジだな。うちのクラス体育ないけど俺がいてよかったな幸太郎!仕方ないから俺の置きジャージを貸してやろう。」 「臭そうだなそれ。持って帰ってちゃんと洗えよ」 「俺は暑がりだからTシャツとハーフパンツで大体済むんだよ、ジャージは滅多に着ない」 うちのクラス寄ってから自分のクラス行けよと言ってくれる。 助かったよ、直登。 「ずいぶんお前のジャージデカくないか?」 体育授業前、着替え終わった藍斗が俺を見て言った。 うん。確かにデカい。 裾は折ってどうにか出来そうだけど痩せ型の俺は普段Mで余裕があるくらいだ。 直登のLLは完全に体に合っていない。 動いたらズボンがずり下がらないか不安だ。 「石田のかよ。」 低い声で藍斗は俺の胸にある刺繍の名前を見て言った。 あれ、怒ってる? 「自分の忘れちゃってさ、ぶかぶかで変かな?」 「先に俺に言えば良かっただろ」 「お前だって同じ時間体育なんだから無理じゃん」 「俺はお前に貸してもどうにか他を準備できる。別に体育サボってもいいし」 ちょっと藍斗の言ってる意味がわからない。 俺にジャージ貸すためにお前が他からジャージ借りてくるか、授業サボる必要は全くないと思う。 そこまでしてもらいたいとも思わない。 今回は意味不明過ぎたからスルーして行こうとしたら 「本当にそれで行く気かよ」 とまた藍斗が立ち塞がってきた。 結局俺が藍斗のジャージを着て、藍斗が直登のジャージを着るっていう謎の妥協案で藍斗は納得した。 実際はこれで良かったかもしれない。 藍斗のジャージはLサイズだったからぶかっとはするけど、ズボンがずり落ちそうになることはない。 藍斗も直登のジャージを着ても、いつもより余裕がある程度でちゃんと着こなしていた。 藍斗の機嫌はジャージの交換をしてからは良くなったが、体育館までの道のりをなんでかずっと俺の手首を掴んで離さなかった。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!