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染まる
息を白くしながら歩く終業式の朝。
「蒼井ってモデルになるのか?」
と唐突に直登が聞いてくる。
「はぁ?あの藍斗に限ってないだろ。」
と言うと「だよな〜」ってぼんやり直登が考えてるから、どうしてそんな話になったのか聞けば
「修学旅行の時クラスの奴が風呂場であいつを見かけたらしいんだけど、運動部でもないのに体がすげー鍛えられてたって言うんだよ。
あの顔だしモデルになるんじゃないかって言っててさ」
「ぶっ!!」
俺は思わず吹き出して大爆笑した。
実はこの前俺もどんどん筋肉を付けていく藍斗を不思議に思って、理由を聞いたばかりだった。
「どうなんだよ?」と直登が聞いてくるから
「直登さ、夏休み俺たち祭りで会ったの覚えてる?」
「ああ、会ったよな」
「あの時さ、柔道部員に囲まれて話す俺を見て、もしこいつらに俺が襲われたらって想像したらしい」
「それ俺たちに失礼だろーよ」
「まぁ、藍斗だからな。今のままじゃ俺を逃すこともままならないって思ったんだって」
「どんな事態を想定してんだ、あいつ?」
俺も話を聞いて、いつそんな状況あるんだよって笑ってしまった。
でも藍斗は体育会系の男達から俺を守る日に備えて、日々トレーニングを欠かさない。
新品に見えたランニングシューズはもうボロボロでまた新しい物が用意されて、ダンベルもスポーツマットも使い込んですでに黒ずみだしていた。
「あいつらしいな」
「だよな」
藍斗の優秀な頭は俺をつなぎとめておく為に、今も思考を巡らせているかもしれない。
努力だってなんだって少しも惜しまず、いつだって必死に俺を求めてくるんだ。
なぁ、そんなお前から俺が離れていくわけないだろ?
藍斗のすべて受け止めていきたい。
そう思うくらいに俺だって藍斗に嵌まって抜け出せそうにないんだ。
だからさ、一緒に幸せになろうな藍斗。
END
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