罪の意識

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もうじき日が暮れる。 用意していた方位磁石を頼りに西へと向かっていたシオンは、暗くなり始める森の様子に足を緩めた。 記憶が正しければ、このまま西へ森を抜けると小さな村がある。 街の方は「赤髪の少年が【黒の獅子】に囲われている」なんて話が広まっているらしいし、僕の存在を知っている人はかなりいるだろう。 それだけ【黒の獅子】というものの影響力は強い。 痕跡を残さない為にも、街に出るのは避けたかった。 ここは村で必要最低限の物を集めるのがいいだろう。 こんな計画を立てる度に、酷く胸を締め付けられる。 それでも僕は行かなきゃいけない。 みんなから、レオから離れるために。 取り返しの付かなくなる前に。 「見つけた」 「……え?」 頭上から、声が聞こえた。 咄嗟に顔を上げれば、木の枝に人の影を確認する。 こんな至近距離に来ても気付かなかったなんて、警戒を怠っていた。 他所ごとを考えすぎだ、情けない。 とはいえ、普通の相手だったのなら流石に気付きはしただろう。 相手の気配はごく僅かなものだった。 これは技術を知っている者の動きだ。素人のレベルではない。 一体何者だと身構える一方で、どこか先程の声に聞き覚えがある気がした。 まだ幼さの残る、気怠げな声。 シルエットで確認できる頭上の耳が、ピョコピョコと左右に動く。 次には雲に覆われていた月が顔を出した。 そして森へと差し込んできた月光が、頭上の人物を淡く照らしていく。 小柄な体。黒い髪。大きな三角の耳。 やがて姿を現した人物に、シオンは瞠目する。 「な、んで…」
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