174人が本棚に入れています
本棚に追加
「シオン。近々、お前を幹部にしようと思ってる」
「え?」
当然の報告に、呆気に取られてしまった。
僕が幹部…?
まだここに来て3ヶ月ほどしか経っていない僕が…?
そんなの、他の団員さんたちに失礼だし、反感を買うのではないだろうか。
「でも、それは…」
「分かってる。団員になって日も浅いやつを一気に昇格されるなんてことは異例だ。だから反論が出れば聞き入れる」
団長として毅然とした様子でそう告げるレオは、次には小さく笑みを浮かべた。
「でも、きっとそんなことにはならない」
「え?どういうこと?」
「お前が幹部になることに不満を抱くやつは出てこねぇってことだよ」
シオンが【黒の獅子】の皆に認められているのは、レオも知っていた。
これまでの間でシオンの人柄も実力も、皆は心得ている。
シオンはピンときていないようだが、それ以上の説明をしようとはしなかった。
「幹部になれば、お前も少しは団員としての自覚を持つだろ。勝手に家出なんかしないくらいにはな」
「っ、だから反省してますよ…もう…」
揶揄い混じりに指摘され、首をすくめた。
派閥全体を巻き込むほどに迷惑をかけてしまったのだ。
今回のことは謝罪をしても仕切れない。
「離れたりしないよ」
隣を歩くレオの手を握った。
いつも彼の後ろを歩いていた僕。
まだまだ守られてばかりだけれど、これからは側に寄り添い、隣を歩みたい。
「僕の居場所は、ここだから」
手を握り返され、指が絡まる。
過去のことを全て無かったことにはできない。
それでも、それら全部を受け止めた上で、前に進もう。
隣にはレオがいるから。
もう恐れはしない。
この人生のリミットがくるその時まで、僕はレオと歩み続ける。
──〈リミット〉 END.
最初のコメントを投稿しよう!