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やがて連れてこれたのは、レオの部屋と繋がっている(おそらく彼専用の)浴室であった。
3人ほどなら優に入れるだろうそこには既にお湯が溜められており、視界は立ち上る湯気でぼやけてしまう。
更にはなんだか甘ったるい香りが鼻をくすぐり、心なしか体から力が抜けるようだった。
「この、香りは…」
「香が焚かれてる。免疫がないやつには効くだろう?下手に暴れられても困るからな」
そう言うや否や、レオは僕の衣類に手をかけると、何の躊躇いもなくそれらを剥ぎ取っていく。
抵抗しようにも、彼の言っていた香のせいで体に力が入らなかった。
「…へぇ、意外と引き締まった体してんじゃねぇか。鍛えてんのかよ」
「っ、そ、そんなジロジロ見ないでよ…っ」
揶揄うような物言いに、カッと首から上の温が上昇する。
不自由な腕でなんとか体を隠すように覆えば、レオは口の端をつり上げたまま、それ以上何かを言うことはなかった。
次には己の服も脱ぎ出すレオ。
無理やり攫われたと思ったら、何がどうして2人で風呂に入ることになっているのだろう。
頭もあまり回らなくなってきた今、その疑問に納得できる答えなど、到底思い付くことはできなかった。
露わになるレオの素肌。
逞しい肉体に、己との成長の差を突きつけられるようだ。
しかし次にはすぐ別のことに意識がいく。
それは彼の背中にある大きな傷跡だった。
抉れたようなその傷跡は、本来の肌よりも僅かに変色しており、明らかに命に関わる大怪我であったことが推測できる。
酷く胸が締め付けられる。
鎮まることのない怒りと後悔が押し寄せてきた。
やはり、駄目なんだ。
僕は、彼と……レオと一緒にいるべきではない。
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