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じわじわと香が効いてきて、ついにはまともに立っていられなくなる。
足元がふらつき壁にもたれ掛かるシオンの腕を、レオは強引に引っ張った。
踏ん張ることもできずに引き寄せられ、咄嗟に顔を上げれば至近距離にレオの顔が広がる。
僕は慌てて身を仰け反らせようとしたが、その前に後頭部に手を回され、途端視界が暗くなった。
暫く、何が起こったのか分からなかった。
しかし口内に彼の舌が入って来た瞬間、我に返る。
なんで、こんな…。
今、僕…、レオと……キス、してる…?
「…っっ」
状況を認識した瞬間、一気に体温が上昇し、汗が吹き出してきた。
まるで此方の呼吸を飲み込むような深い口付けに混乱する。
苦しい…。
苦しくて苦しくて、溺れてしまいそうだ。
あまりの息苦しさに、無意識にレオに縋りつこうとした手をいなし、次には思いっきり彼の体を突き飛ばす。
香のせいで大した力もなかったけれども、幸い体は難なく離された。
荒い呼吸を繰り返しながら、顔を真っ赤にするシオンは口元を押さえる。
そしてわなわなと体を震わせ、目の前の全く悪びれた様子のなさそうなレオを見上げた。
「なっ、ななな…っ、何してるんだよ!?」
「何って、キスだろ。アホかお前」
「っ…、ふ、ふざけ、ないで…っ!」
そんなことを聞いているんじゃないのに。
レオだって、僕の考えてることくらい分かるはずだ。
もしかして揶揄われているのか?
簡単に攫われて、いいようにされてる僕を見て楽しんでいる?
「ふざけてなんかねぇよ」
「え…、ぅぐ…っ!」
抑揚のない彼の言葉に、一瞬体が固まった。
その隙をついて距離を詰めて来たレオは、勢いよくシオンを浴室の壁に体が向かい合う形で押さえつける。
両手首を片手で掴まれ、頭上に拘束されたシオンは、肩越しにレオを振り返り声を上げた。
「な、何するんだ!」
「お前が分からずやだから、思い知らせてやんだよ」
「え…っ?」
一体何を言っているのか分からずに困惑するシオン。
レオはうっすら笑みを浮かべ、一度己の上唇を舐めた。
「まずは体から、教え込んでやるよ」
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