174人が本棚に入れています
本棚に追加
「こんないい場所があるなんて知らなかった!」
「結構入り組んだとこにあるから、気付きにくいよね」
「逆になんでレオは見つけられたのか謎だよ。今まで独り占めしてたなんて、ずるいなーほんと!」
湖の近くで二人昼食をとりながら談笑する。
無邪気に話しかけてくるコルネに、自分はちゃんと笑えているだろうか。
強張る頬を必死で緩め、コルネの話に応じる。
隣のコルネが、手に持ったカップを口につけお茶を飲んだ。
既に一杯分は飲んだはずだ。
僕は味のしないバケットサンドを無理やり咀嚼し喉に流し込む。
少しずつ、コルネの声に力が乗らなくなっていくのが分かった。
ユラユラと揺れる体を横目に確認し、シオンはバケットサンドの最後の一口を口に含む。
次には大きくグラついたコルネの体が地面に吸い込まれていく。
しかし倒れ込む前に手を伸ばしたシオンは、その小さな体を抱きとめた。
そうしてゆっくりと彼を原っぱの上に横たえ、立ち上がる。
コルネが部屋に訪れる前まで作っていたのは、睡眠作用の強い薬膳茶だ。
強力なものではないが、姿を消すのにそれほど時間は必要ないだろう。
それに長い間ここに眠ったまま放置するのも危険だ。
こんなすぐに決行することになるとは思わなかったが、やるなら早い方がいい。
罪悪感に胸を締め付けられるのをグッと堪え、シオンはその場を後にした。
睡眠作用の効果から考えて、グズグズしている暇はない。
「ごめんね、コルネ…、みんな…」
ごめんなさい…。ごめんなさい…。
森の中を駆け抜けながら、ギュッと瞼を瞑る。
だめだ、いけない。揺らぐな。
僕は、ここにいてはいけないから。
みんなを、レオを、不幸にさせてはいけないから。
だから、離れなければ。
僕は、レオと一緒にいてはいけないんだ。
最初のコメントを投稿しよう!