罪の意識

13/16
前へ
/192ページ
次へ
掠れた声はごく小さなものだったが、相手の耳はしっかりと聞き取っていたようだ。 その眠たげに見える双眸でシオンを見下ろしながら、うっすらと口元に笑みを浮かべる。 「また会えましたね、アーネットさん」 「パウエル、くん…?」 何故【レグルス】の彼がこんな所に…。 【レグルス】の本拠(ホーム)が何処にあるのかは知らないが、少なくともこの辺りではないはずだ。 そもそもこんな都心からも離れた場所に【黒の獅子】以外の派閥がいるなんて聞いたこともない。 『あなたとは、また会うことになるでしょうから』 そう言ったパウエルくんの言葉を思い出して、僕はハッとした。 軽い身のこなしで地面に着地した彼を見つめて、呟きを漏らす。 「僕を、探してたの…?」 初めから、僕に会いにくるつもりだったのだろうか。 でも、何のために? ただでさえ【黒の獅子】と【レグルス】は派閥間での関係性はよろしくない。 そんな相手方の領地に近付くことは危険を伴う行為だ。 そこまでして、僕に会う目的は一体──。 「よく、見つけられたね…」 「猫の獣人は、夜目が効くんですよ。夜行性なので」 「それで、僕に何の用?」 少し聞き方がキツくなってしまうが、今は仕方がない。 風が吹き、木々がざわざわと揺れる。 妙にひんやりとした空気が頬を撫でた。 その場の異様な空気感を、僕にひしひしと伝えてくる。 ここは逃げるべきではないかと僅かに片足を後ろに下げた時、背後からまた新たな声がかけられた。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

174人が本棚に入れています
本棚に追加