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「じょ、嬢ちゃん、よく食べるねぇ…」
「んむむっ、むぐむぐぐっ(僕は男です!)」
「飯を頬張り過ぎて何言ってるか分からねぇよ…」
大量の料理たちが次々と完食されて行くのを、周りは呆気に取られたように眺める。
その小さな体のどこに入って行くのか…。
物凄い勢いで積み上げられて行く皿たちに、周りは自分たちが飲食するのも忘れて見入ってしまっていた。
そうして食べに食べた結果──…。
「お、お金がなくなった…!」
いくら稼いでも全て食費に消えて行くお金たち。
今回はいつも以上に空腹だったために、ついついセーブが効かなくなってしまい、すっかり財布の中はすっからかんになってしまっていた。
これでは到底、宿代なんて払えない。
「わざわざ街まで来て野宿…」
野宿自体は慣れているが、折角無理をしてまでこの街に足を運んだのだ。
それなのに宿を借りられないなんて、悲惨すぎる…。
その時ふと、首からぶら下げているペンダントが目に入った。
革紐に繋がれた紅色の美しい石が、街の灯りに照らされて艶やかに輝く。
これだけ綺麗な石なら、売ればそれなりの額が付くだろう。
宿代にしても、十分お釣りがくるほどには。
だが、これを売るという選択肢はありはしなかった。
例え命と引き換えにされたとしても、手放すことはないだろう。
「そろそろ使い時かなぁ」
そう呟き、シオンは己の一つに縛った髪を指に絡ませた。
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