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ペンダントの石と同じ色をした、真紅の髪の毛。
珍しい髪色だし、質もいいので売ればそこそこの値段になる。
万が一のためにとここまで伸ばして来ていたのだが、そろそろ長い髪も鬱陶しいし、丁度いいかもしれない。
「まずは売れるところを探さないとなぁ」
髪を切るのはその後でいいだろう。
師匠から貰った小刀はまだ鞄の中に入れたまま、シオンは買取屋を探して歩き出した。
もうすっかり日は暮れ、大通りはたくさんの明かりが灯され、酒場などから賑やかな声が聞こえてくる。
すっかり酔っ払い、ゲラゲラと笑い合っている巨人族と小人族の男性たち。
ビールジョッキを一気に4つも運ぶ、活発そうな獣人のウェイトレス。
気難しい議論を交わし盛り上がるエルフの青年たち。
街は活気に満ち溢れ、ここまで他種族同士の親交が深い地域を初めて見たシオンは、興味深そうに辺りを見渡し目を輝かせていた。
そうして歩いていれば、気付けば大通りから外れてしまったようだ。
人気のない道を歩きながら、シオンは引き返すか否か迷い始める。
──その時。
突然目の前に現れた青年に、シオンは目を見張った。
ほぼ白に近い金髪を靡かせながら、目の前に現れた彼。
目鼻立ちはまるで作り物のように整っており、その尖った耳から彼がエルフであることが察せられる。
一見繊細そうにみえる容貌だが、その瞳に宿る強い光から、彼が只者でないことは容易に分かった。
エルフの青年はシオンの存在に気付くと、先程のシオンと同様にその目を見張る。
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