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次には相手がその短剣をシオン目掛けて繰り出してくる。
それをシオンはスレスレで避け相手の腕を掴むと、半回転しながら一気に距離を詰め、フードで隠れた顔面目掛けて勢いをつけた肘打ちを食らわせた。
もろに入った攻撃に、カランッと、相手の手から短剣が落ちる。
2、3歩後ろによろめく相手に、シオンは間髪入れずに回し蹴りを叩き込んだ。
鳩尾にめり込んだ蹴りに、相手の体は吹き飛び、勢いよく建物の壁に衝突する。
今ので気を失ったのか、それ以上動く気配はありはしなかった。
その一連の出来事を唖然と見つめていたエルフの青年は、サラサラと靡く赤髪に目を向けた。
一体どこから今の力がと思えるような小さな背中。
その一つに縛った長い髪も相まって、後ろ姿だけでは少女と見間違えてしまうだろう。
「医者見習いとして、怪我人を置いて行くなんて許されませんから」
次には振り返り、えっへんと腰に手を当てるシオン。
実を言うと師匠に教わったのは、医術だけではないのであった。
「君は、一体…」
「ただの医者見習いです。さっ、その傷の手当てをしましょう」
呆然とするエルフの青年に歩み寄り、ショルダーバッグから治療具を取り出す。
しかし背後から先程と同じ気配を感じ、シオンはため息を吐いた。
意識が戻った相手が、また別の短剣を手に、再び此方へ突っ込んでくる。
ほぼ捨て身の攻撃は隙だらけで、シオンは軽々と相手との間合いを詰めると、渾身の右ストレートを叩き込んだ。
すぐに踵を返そうとしたシオンだったが、次に目に入ったものに瞠目する。
「……ぇ」
自分のものとは別に、相手の頬には拳がめり込んでいたのだ。
今度こそ戦闘不能になった相手に目をくれず、シオンはその拳の正体を目で辿る。
そして次には、あまりの衝撃にヒュッと息を呑んだ。
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