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礼儀丸投げのヤケクソの神頼みをした直後、
「わ!」
後ろから思い切り押されて前のめりにつんのめる。
バランスを崩した私をすかさず抱き留めてくれる腕があった。なんならロマンスも生まれそうなシチュエーションだが、
「ぶへ」
私は思い切り胸部に突っ込み間抜けな悲鳴をあげているのだから、ロマンスのロの字もない。いやそんなこと考えている場合じゃない。
我に返った瞬間、背後で耳を覆いたくなるような断末魔が聞こえた。
はっと振り返った先には、もうあの化物の姿はなかった。
代わりにあったのは、小さな人影だ。
そう、本当に小さな。
「この馬鹿者」
叱責の声がした。
軽い足音が私に近付いてくる。
私を抱き留めてくれた人影が離れ、少し離れた所で恭しく頭を下げた。
誰に対して?
そんなのは決まっている。
「日が落ちた神社に神域はないと言っただろう」
小さな体躯が蹲った私の前に立ち、高い声音に見合わない重々しさで言い放つ。
呆然と見上げる私の口から掠れた声が溢れ落ちた。
「…しゃ、社長…」
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