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「お客さん…強いのね…」
「当たり前だ…
妻とは、あの晩以来、ずっと何もないんだからな……
あの晩だって、泥酔してなきゃとても……」
ミカエルはキングサイズのベッドにぐったりと横になったまま、ぽつりと呟いた。
「え?!お客さん、奥さんがいるの?!
独身じゃないの?」
「独身じゃなくて悪いか!
俺だって、好きで結婚したわけじゃない!」
「ふぅ~ん、奥さんとうまくいってないんだ?」
「ねぇねぇ、お客さんの奥さんってどんな人?
かわいこちゃんなの?」
「そうさ、上品で綺麗でしっかりしてて、しかも、かなりのボインで…
……だったら、俺はこんな所にいねぇよ!馬鹿野郎~!!
なんで、こんなことになったんだ……」
一時は、忘れかけていた甘美な世界……
酔った上での過ちとはいえ子供も出来たことだし、これからの趣味はスィーツだけにしてまっとうに生きていこう…!
そんなことを心に誓ったミカエルだったが、パラダイスの魅力の前ではそんな誓いさえ忘れてしまう……
「ねぇねぇ、お客さん、そんなに奥さんのことがいやなの?」
「……あぁ、俺、なんであんなのと…
……どこか遠くに蒸発したい……」
ミカエルが潤んだ瞳で呟いた。
「お客さん、お時間ですよ~!!」
黒服が扉をノックする音が響く。
「ちぇっ…なんだ、もうそんな時間か…」
ゆっくりと服を着たミカエルが、部屋の外へと出て行く。
「お客さん、また、ご指名よろしくね~!」
ナースと女王様と女子高生のハモった声が響いた。
「お客さん、お会計はこうなっております。」
黒服が、ミカエルに請求書を差し出した。
「な、なにっ!こんなに高いのか!」
「当然ですよ。
この国では、キャバクラはご法度。
しかも、お客様は禁断のお持ち帰りボックスに三人もお持ち帰りされたんですからね!」
「わ…わかった!
ノルディーナの紙幣だけど良いよな?」
「ええ、けっこうですよ。
両替の手数料は少しかかりますが……」
ミカエルは、懐から札束を取り出し高額な金額を支払った。
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