策略の結末

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「アンジェリーヌ様!カパエル様! ……どなたもいらっしゃらないのですか? サミュエル様を一人っきりにして、どうなさったのかしら? あらあら、カパエル様ったらこんな所にお洋服を脱ぎっぱなしにして…」 服を片付けたメイドのメアリーは、ふと部屋の片隅に子豚の姿を発見する。 「まぁ、なんでこんな所に子豚が? こらっ!豚!どこから入って来たんだ! 出ておいき! 待て!こらぁ~~!」 メアリーが子豚を追い回し、子豚は部屋の中を逃げ惑う。 「どうしたの、メアリー? 大きな声を出してはしたない…」 「あ、アンジェリーヌ様! どこから入って来たのか、子豚が… ほら、あそこです!!」 「子豚?」 「こらーーーー!!」 「メアリー、駄目よ!! 子豚さんが怯えてるじゃないの。 さぁ、子豚さん、こっちへいらっしゃい。」 「ぶひー……」 「可愛い子豚さんね。 あなた、一体どこから入って来たの?」 アンジェリーヌの胸に抱かれて、子豚はとても幸せそうにしがみつく。 「……ぶーたん。」 「え?サミュエル、今、なんて言ったの?」 「ぶーたん」 「まぁ!!メアリー、聞いた? サミュエルが喋ったのよ! すごいわ!サミュエルはまだ生まれて間もないのに…… しかも、最初に喋った言葉がぶーたんだなんて…サミュエルはよほどこの子豚さんのことが気に入ったのね。」 (嘘~! 生まれたばかりのサミュエル様にこれが豚だなんてわかるはずないのに…… たまたまじゃないの? でも、ま、いっか…アンジェリーヌ様がそう思ってらっしゃるのならそれで…) 「きっと、そうですわね、アンジェリーヌ様。」 メアリーはにっこりと微笑んだ。 ちょうどその時、部屋にカパエルが戻って来た。
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