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出会い
高校2年の冬。俺......黒井 真守は、親の仕事の都合で静岡に引っ越す事になった。転勤族なので引っ越しには慣れているが、やはり同級生との別れは辛いものである。
「まぁもる~......元気でなぁ~......」
「お前の事、半年は忘れねぇからよぉ~......元気でなぁ~......」
「半年で忘れるなよ......。お前らも元気でな?」
引っ越し当日の朝。親友のフミヤとマサタカが別れの挨拶に来てくれた。野球部でいつも明るく、誰よりも黒く日焼けしているマサタカは子供の様に顔をくしゃくしゃにして泣き、クラスで一番大人びているフミヤも、今はボロボロと大粒の涙をこぼしている。
「またこっち帰ってくる事になるかもしれねぇしさ?そしたらまた遊ぼうぜ」
「あそぶぅ~...そしたら俺、全力でお前と遊ぶぅぅぅぅうえぁああああ」
「きったねぇよマサタカ......」
わんわんと泣き出してしまったマサタカの頭を撫でるフミヤの顔も、涙と鼻水でグチャグチャである。2人の汚くなった顔を見ながら、俺は溢れそうになる涙をグッと堪えた。
「真守~、そろそろ行くわよ~」
「...あぁ、うん。じゃ、またな」
「ま、またな......またなぁあああっ!!」
「元気でな真守!また電話したりしような!!」
母ちゃんに促されて車に乗ろうとする俺に、2人が叫ぶ。俺は溢れそうになる涙を必死で堪えて、子供の様に泣く2人に手を振った。
高速に乗って2時間後、俺たちは目的地に到着した。この間まで住んでいた東京とは全然違い、とんでもなく田舎だ。
(不便そうな町だけど......まぁいいか)
ここで過ごすのも、どうせ1年くらいだろう。俺は憂鬱な気持ちになって、ボロい外観のアパートを見上げた。
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