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それは、何てことのない、平和な日曜の午後。
同じマンションの隣の家に住む、幼馴染みの部屋の床に座ると、オレは近所のコンビニを巡回して調達してきた新商品の菓子を、ラグの上に並べていく。
つぶつぶいちごのキノコの森、まるごとマカダミアトリュフ、黒蜜きなこ味のホワイトサンダー、カフェモカ味のカントリーグランマ、中までチョコたっぷりのスティック菓子ノッポ・季節限定抹茶ミルク味。
──ああ、どれも美味そう。
「ヨリも食うか?」
並べた新製品を、うっとりと眺めながら声をかければ、ヨリ──常磐依彦が、舌打ち混じりに肩を竦める。
「…全部、チョコ入ってるじゃねえかよ」
低い声で、うんざりしたように呟くと、依彦はすぐに背を向けてしまった。
5月生まれのオレ・砺波夏流より、半年以上遅く生まれたにもかかわらず、身長はオレより20cm以上もでかくなりやがった依彦は、キャスターつきの椅子に座ると、デカイ体を押し込めるようにして、小学生の時から使っている勉強机に向かう。
半分だけ北欧の血を引く母親ゆずりの、生まれつき色素の薄い髪と瞳。そして、ちょっと鋭さのある目付きと高い鼻筋。依彦は動物で例えるなら、まさにライオンだ。…それも野生のじゃなくて、動物園の檻の中で寝てるだけの、まったくやる気のないライオンを想像していただけると、ピッタリかもしれない。
身長と見た目の相乗効果で、かなり目立つから色々と誤解も多いけど、そうして予習・復習を欠かさないあたり、依彦は基本的には真面目なヤツなのだ。
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