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scene:01《塩キャラメルと電柱とGPS》
──目覚まし時計が鳴る30分以上前に、オレは目を覚ました。
カーテンの向こうから射す朝の光が白い。…今日もいい天気だ。目覚めはスッキリ。でも気分はドンヨリ。
モソモソとベッドから抜け出すと、壁に吊るした制服に手を伸ばす。…黒地に金ボタンの、どこにでもある詰襟の学生服が、オレがこの春から通う、県立椿台高校の制服だ。
グレーのパーカーの上に学生服を羽織ると、オレはカバンを手に玄関へ向かう。──すると、
「あら、なっちゃん。もう出かけるの? 朝ごはんは?」
背中に飛んできた、某美少女アニメの萌えキャラにそっくりなアニメ声。肩越しに振り向けば、白いフリフリのエプロンを見事に着こなしている、自称“永遠の22歳”の母・はるなが、キッチンからヒョコッと顔を出していた。ちなみに、母の実年齢は…いや、やめておこう。本気で何をしでかすかわからないから。
卵形の輪郭に配置された、クリッとした黒い目と、小振りだけどバランスのいい鼻と口。どことなく小動物っぽい雰囲気…並んで歩けばビックリされるくらい、オレの顔はこの母にそっくりらしい。ちょっと(いや、かなり)嫌だ。
「今日はいらない」
「えー、もう作ってるのにー。今日はなっちゃんの好きな、塩キャラメルのパンケーキよ?」
母の声に、足がピタッと勝手に止まり、くるりと踵を返す。
「…5分で用意して」
「やぁねぇ、3分でできるわよう」
歌うように言うと、母は3分かからずに、テーブルに皿を置いた。
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