scene:08《お花畑とたい焼きと地獄の釜》

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scene:08《お花畑とたい焼きと地獄の釜》

   「君達は盗みを働いて、おばあさんを危ない目に遭わせた。それだけでも許しがたいけど、刃物まで持ち出して、夏流の、あの可愛い顔に傷をつけたね」  夏流の、つるりとなめらかな頬を伝っていた、ひとすじの赤。  「ノジマくんは、“警察に突き出すなら、さっさとすればいい”と言ってたけど…残念ながら、僕は夏流ほど甘くないんだ」  犯人を確保して、おばあさんにバッグを返しただけで終わらせて、自分の頬につけられた傷など、かすり傷だからとまったく気にも留めない夏流とは。  「君達は僕の逆鱗に触れたんだよ。警察に行く前に、相応の罰は受けてもらおうか」  「…ば、罰って…」  すっかり畏縮した様相の2人に、冷たく笑ってみせる。  「ああ、残念ながら僕に武術の心得はないから、簡単な人生勉強だと思えばいいよ。…ただ、世の中には、絶対に敵に回してはいけない人間がいるということを、その決定的に足りない脳ミソと、骨の髄の隅から隅までに、たっぷり刻みつけていくといい。──生まれてこなければ良かったと後悔するくらいにね」  そう言って、喉の奥でくつくつと笑えば、2人の顔から完全に血の気が消えた。  ──さて、ムダなおしゃべりはここまでにしようか。  ゆっくりと距離を縮め、顔面蒼白な2人の目の前に立てば、まるで地獄の釜に放り込まれる寸前の罪人のように、2人は恐怖に震え上がる。  「さあ──仕置きの時間だ」              【scene:08 End】
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