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「歳三にもいつも迷惑ばっかかけてるから、もちろん買ったけど」
言葉が、喉に引っかかって出てこない。
そうこうしている間に、璃桜はきゅっと紐を腕に結びつける。
「そうちゃんがお兄ちゃんで、本当によかった」
キミは、天使のような、笑顔をみせる。
「いつも、ありがとう……大好き!」
照れちゃうね、なんて言いながら、眉をさげて笑う璃桜を見たら。
理性が、吹っ飛んだ。
「……馬鹿」
「っ、」
ぎゅっと、抱き締める。
少し力を加えたら、折れてしまいそうな矮躯。
その華奢な肩口に顔をうずめれば、璃桜の香りに包まれる。
「そうちゃん?」
「うるさい」
ああ、もう。
何処まで我慢させれば、気が済むんだよ。
「………大好きだよ、璃桜」
「私も!」
阿呆。
俺の大好きと璃桜の大好きは、種類が違うんだってば。
夕陽が、1つになった影を長く伸ばしていく。
璃桜は、俺にとって、大好きで、大好きで、大好きで。
大切すぎる、そんな、女の子。
だからこそ、このままじゃいけないんだ。
璃桜の香りを吸い込むように、深呼吸する。
鼻腔に広がる香り。
それは、甘くて、少しだけ、ほろ苦い。
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