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「そんなに急いで。如何したの」
そう問いかければ、嬉しそうに報告してきた。
「芹沢さんに、お金を貰ったの!」
「え?」
芹沢鴨。壬生浪士組の筆頭局長といえば聞こえはいいが、実質、ただの暴君である。金策という名の押し借りをし、遊郭に入りびたり、浴びるように酒を飲み。
「どうして、お金なんて、」
芹沢さんと璃桜が近づくのは、あまり好ましくない。璃桜は訳あって、男のふりをしてこの場所にいる。あまり距離が近くなって、女だとばれた日には、楽観主義者の自分でも恐ろしい想像しかできない。
「昨日の夕餉がおいしかったって!」
だけど、そんな俺の心配など無用の理由が璃桜の口から紡がれた。
「……そっか、よかったね。で、どうして俺のところに来たの」
そう問えば、何故か目を逸らす璃桜。じっと見ていれば、困ったように小さく理由を唇から落とす。
「……ちょっとだけど、お金が入ったから、そうちゃんとお出かけしたくて」
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