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「誰にあげるの?」
「……っ! びっくりしたぁ」
突然の俺の声に、驚いて肩を揺らす璃桜。
それほどまでに、真剣に選んでいる。その紐が贈られる相手が、酷く、羨ましくなった。
「………っ、秘密」
少しだけ、頬が染まる。恋の、色。
璃桜は、気づいているんだろうか。
「ふーん」
面白くない。てゆーか、隠せてない。
璃桜がそこまで真剣になる相手なんて、一人しかいない。
「うーん、そうちゃん、どっちがいい?」
そう言って差し出された、竜胆色と紺碧色。
「なんで、俺に訊くの」
ああ、つまんない嫉妬。
「そうちゃんなら、どっち選ぶかなぁ、って」
「………俺だったら、紺碧」
「ありがと!」
そう言って、璃桜は会計をするために店の奥へ入っていく。
「はは」
乾いた笑いが喉を掠める。かさり、懐に仕舞った簪が音を立てる。
こんなものを贈ろうと、璃桜を幸せにする力は、あの人には勝てない。
それが、悔しくて。
今でも届かないのに、病気になるなんて言われたら、もう絶対に敵わなくて。
それでも、キミの笑顔を護るために足掻こうと、キミに嘘を吐き続ける。
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