泡沫の願い

9/19
前へ
/19ページ
次へ
「………ごめん」 いきなり謝った俺に、きょとんと首をかしげる。 そんな璃桜をくるり、回れ右させる。 「え、そうちゃ、」 「黙って」 璃桜の後頭部の髪結い紐を解く。 さら、と髪が手から零れる。 「何す」 「……ちゃんと綺麗にしてあげるから」 自身の懐から出した、輝く簪で、柔らかい髪をそっとまとめていく。 「え、何、そうちゃん、これどうなってんの」 「………秘密」 意趣返し。 そうでもしないと、その可愛さに、こっちがやられてしまいそうだから。 璃桜はそっと自身の頭に手をやり、簪が刺さっていることに気が付く。 ゆるゆるとキミの口角が上がって。 「……そうちゃん」 「ん?」 「本当は、屯所に戻ってから渡そうと思ったんだけど」 じゃーん、そう言って出したのは、先ほど見ていた、紺碧の髪結い紐。 「腕出して?」 「え」 「いいから」 「それ、土方さんのじゃ……?」 「ううん、……そうちゃんのだよ」 なかなかうまく巻き付けられずに、苦戦しながら、璃桜は言葉を紡ぐ。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加