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 おはようございます。今日で僕は三十歳になりました。しかし変わったことは特にない。  朝起きてからのルーティンをこれから話していきたいと思う。勿論時間がある訳ではないので、やりながら説明するのでよろしく。  僕は毎日7:30に起きる。もちろん自分で起きられるわけではなく、毎朝、黒い手帳型のスマホカバーに身を包んだアンドロイド型のスマートフォンに起こしてもらう。こいつがいないと起きられない。スマートフォンがなかった小学生の時はどうやって起きてたんだろう。もう思い出せない。  起きたら、まずは歯を磨く。口の中が乾燥してしまう性質なので、潤いを与えつつお口をきれいにしてます。しかし頭の中にはまだもやがかかっているので、同じところをずっと磨くこともよくある。だけど、朝頑張って起きてるのでご愛敬。  その後、ポットにお湯を入れてスイッチを入れる。机の上には、コップとみそ汁茶碗。コップにはコーヒーと砂糖を適量入れて、みそ汁茶碗にはインスタントのみそと具を入れる。こんなに水分を摂るんかいって思われるかもしれないけど、寝ている間に飛んで行ってしまった水分と熱を摂取したいがためなのです。  そして、お湯を沸かしている間にシャワーを浴びる。そしてここが僕の朝の肝になる。どういうことか。「顔を描く」のである。化粧をするのか?いや、さすがに化粧はお風呂ではしない。  服を脱いだら、蛇口をひねってお湯が出るのを待つ。服を脱ぐ前に蛇口をひねるのはなんか違うんだよね。お湯が勿体なく感じる。それくらいの余裕は持ちたい。それに、お湯のありがたみを、感じやすくなると思うんだ。  まずは頭からシャワーを浴びて、寝癖を直す。そしてシャワーを浴びて体を温める。どんだけ温めるんだよって声が聞こえる。だけどそれだけ冷え性なんです。  そして髭を剃る。朝のお風呂の中で一番大事な行為。肌を傷つけないようにシェービングジェルを顔に付けて、五枚刃の髭剃りでゆっくりと丁寧に上から下へと撫でる。そうすると、ぽろぽろと髭が僕の身体から落ちていく。毎朝剃っても生えてくるんだから、本当にすごい生命力だ。  無心で剃ることもあるのだが、毎回いつも何か考え事をすることが多い。今回は、三十歳にもなって思ったこと。  三十歳になって思ったことなんだけど、中学生から中身ってなにも変わってない。年を重ねるにつれて感情の振れ幅が緩やかになってくるのかと思いきやそんなことはなく、辛いことがあったらとことん落ち込むし、腹が立つことがあったらキレる。そんなに変わってないのだ。それじゃ変わったことは何か、周りの視線だ。自分は何も変わってないのに、周りの視線と態度がどんどん変わっていく。だから、しっかりしなくちゃいけないとか、責任を持たないといけないとか考えないといけない。大人になるとそれが辛くなってくる。  そんなことを考えてるうちに髭を剃り終わった。今日も上手く剃れて肌を傷つけることがなかったので、幸先がいい。  僕にとって髭を剃っている時が、顔を描くことになる。化粧をするのではなく、目と鼻と口をつける。冗談みたいでしょ。たしかに冗談なんだけど、比喩表現的な意味でそう感じてる。大人になって思うことの一つである。男性で言う髭を剃る、女性で言う化粧をする僕にとっては、顔を描くこと。印象をがらりと変えてしまう。実際に、部位を取り付けているのかもしれないが、どちらとも子どもにはなくて、大人になってからし始めるものだ。  水場から出て、タオルで身体を拭き、頭をドライヤーで乾かす。髪がサラサラになったら皺一つないワイシャツとスーツに身を包んで、ご飯をよそい、冷蔵庫から納豆を出し、沸騰したティファールからコップとみそ汁茶碗にお湯を入れる。そして「いただきます」、ご飯を食べる。  朝はそこまで食欲もないので、簡単に済ませるのが僕の流儀。かっこよくいってみたけど彼女もなく、独り身だからこそこんな食事なのだ。彼女がいたこともあったが、なんでだろう別れてしまった。愛想をつかされたんだろう。他の人と比較することが多かった僕は、何かと身の回りのものを比較して、彼女を困らせていた。今では本当に悪いと思う。今は納豆をかき混ぜているので、手を合わせて謝れないのはご了承。そしてしばらくして「ご馳走様でした」。  食器を下げて、ちゃちゃっと洗ったら、一緒に歯を磨く。白い歯であいさつしたほうが、気持ちがいいしね。もう時刻は8:20.そろそろ出ないと、会社に間に合わなくなる。最近はやりたいことが無くなってきて、ただ生きるだけのために会社に行っている。子どもの時はそんなことなかったんじゃないかとも思うが、実は子どもの時からやりたいことはなかったんじゃないかとも思えてくる。時間もないのでこんな果てのない思考は、口と一緒にゆすいで流してしまおう。  それではかばんを持って、靴を履いてドアを開ける。それではみなさん、いってきます。
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