新たな旅へ

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(わしが年寄りじゃから、なにも出来んと思われとるんじゃな。 そりゃあ、暮らしていくだけのものはもらっとるから感謝しとるが、バリバリ仕事をして家を買わんことにはこの村では結婚も出来んらしいからな。 いくら年寄りだって、結婚くらい…) リカルドはそんなことを考えながら、ふと、自分の年を考えた。 (そういえば、今度の誕生日が来たらわしももう…ピー…歳か… ……な、なんじゃと!?もう、…ピー…歳!? …ピー…歳といったら、ノルディーナの国の男性の平均寿命だったのでは…!!) リカルドの両手がわなわなと震え、その口は空気を求めるようにぱくぱくと虚ろに動いた。 (そ、そ、そんな! わ、わしは、一生、結婚もしないうまま一人寂しく死んでいくというのか!? いやじゃ、いやじゃ! そんなこと、絶対にいやじゃーーーー!!) リカルドは、座って気持ちを落ちつけようとテーブルに向かって歩き出す。 しかし、動揺のため、脚はもつれうまく歩けない。 「あっ!」 よろめいた拍子に、リカルドは本棚の縁につかまり、その時、本棚から一冊の本が飛び出した。 (あぁ、危なかった…) リカルドは、落ちた本を元に戻そうと手に取った。 「これは……?」 その黒い表紙には「秘薬の書」と書かれていた。 リカルドは、いかにも怪しいその本に興味をひかれ、テーブル席に持ちこんで一心に読み始めた。 (な、なんと!) 最初のページには「カパアグラの作り方」と記されてあった。 (「カパアグラ」といえば、全男性カッパの憧れのあの秘薬ではないか。 183歳の老カッパに子が出来たと週刊誌に載っておった。 だが、その分、とても高価で、ごく一部の富豪しか手にすることは出来ない秘薬じゃ。) リカルドは目を皿のようにして読み耽る。 (な、な、な、なんと! カパアグラがこんなに簡単に作れるとは! こんな材料なら、ノルディーナに帰ればすぐに手に入る。 …そうじゃ!材料を揃え、カパアグラを大量に作ってここで売れば…わしは、すぐに大金持ちになれる! そしたら、家も買えるし、結婚も…!!) リカルドの胸は希望に膨らんだ。 しかし、すぐにその希望もしぼんで消えた。 (ダメじゃ…いくら家が買えても、相手がおらん…)
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