新たな旅へ

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リカルドはがっくりと肩を落とし、秘薬の書を閉じた。 「はふーーーー」 いつもと同じ大きな溜息を吐き、リカルドは虚ろな瞳を泳がせる。 (こんな所、来るんじゃなかった… こんなことなら、まだノルディーナにいた方が良かった。 あぁ、戻りたい…ノルディーナに戻りたい… でも、戻ったらきっとルーファスに馬鹿にされるに決まっとる! あぁ…わしは、どうすれば良いんじゃ…?) リカルドの皺がれた瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。 しばらく放心したようにその場に座りこんでいたリカルドだったが、やがてゆっくりと先程の本に手をかけた。 (とりあえず、材料と分量だけはメモっておくことにしよう。) 懐から帳面とペンを取り出したリカルドは、カパアグラに必要な材料をしっかりと書き写した。 さらに、もう一度、メモと書き記したものが違っていないか確認したリカルドは、パラパラとその本をめくり始めた。 カパアグラの他には特に目をひくものもなく、本を閉じようとした時、リカルドの瞳が大きく見開かれた。 「こ、これは…!」 リカルドは食い入るようにページをみつめると、やがて本を閉じ、あたりを見まわしてその本をそっと懐の中に納めた。 「さぁて、帰るかな…」 数人しかいないその部屋に響く渡るようにそう言い残し、リカルドは立ちあがった。 そのまま素知らぬ顔をして、盗んだ「秘薬の書」を胸に、図書館を後にした。 * 「えっ!?じいちゃん、どうしたの?」 「いや、なに。 やっぱり人間の世界が恋しくなってのう… おまえ達に会いたくなったら、また、すぐに来るからの!」 突然、ノルディーナに戻ると言い始めたリカルドにカパ子も驚いたが、その決意が固い事を知ると、快く承諾してくれた。 リカルドは次の日、カッパ-ポンの村を旅立った。 「じいちゃん、またいつでも遊びに来てね~!」 「あぁ、必ず、また遊びに行くよ~!」 泉の中から手を振るカパ子親子に、同じように手を振り返し、リカルドは歩き始めた。 (ふふふ…今度わしがカッパーポンに行ったら… 皆、驚くことじゃろうな…ふふふふふ)
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