2話「倒れても這い上がって」

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 今日は外で食べる予定だったから、家には何も食材がなかった。未梨亞はだいぶ空腹だったようなので、近くにあるファミレスへ行くことにした。  雨はすでにやんでいる。 「すみません、いただいちゃって……」 「いいのいいの。好きなだけ食べて」  ファミレスに入っても、彼女は遠慮して何も注文しようとしなかった。その理由はお金を持っていなかったからだ。  愛良も一応社会人。一食おごるぐらいたいしたことないし、無一文の人を放っておけるはずもなかった。  相当お腹がすいていたのか、注文したハンバーグセットをあっという間に平らげてしまう。 「あたしの分も食べていいよ」  ペペロンチーノの皿を未梨亞のほうに押す。 「え、いいんですか?」  遠慮しながらも、その目は輝いていた。 「どうぞどうぞ」  まるで子供の相手をしているようだった。こんなことで喜んでもらえるなら、いくらでも譲りたいと思ってしまう。 「おいしそうに食べるんだね」  浩一とのデートでは食べる前に別れ話になったため、何も食べていなかった。お腹はすいているが、今は何かを食べる気分ではなかった。  それより、未梨亞がおいしそうにむしゃぶりついている姿は、なんだか見ていて気持ちよく、心が落ち着いた。 「ふわぁー、お腹いっぱいです。あ、ギャグじゃないですよ」 「え?」 「あ……。名字が不破でして……」  名前は聞いていたが、これだけの付き合いと思い、ちゃんと覚えていなかったのだ。  ギャグとしては全然面白くなかったが、言い方が妙に可愛らしかったので笑ってしまう。 「ふふ、喜んでもらえて何より」 「本当にありがとうございました」  心から礼なのだろう、未梨亞は頭をぺこりと下げる。  髪が皿に触れそうで愛良は不安になる。
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