ダチョウの底力

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ダチョウは、好奇心旺盛な生き物だが、その反面臆病な生き物でもある。 俺は、足場付き脚立の上で待機した。 サブが、背中を見せたその瞬間、背中に飛び乗る。 中央よりやや後ろに乗れれば成功だ! しかし、臆病な生き物であるダチョウは、背中に乗ったや否や猛ダッシュで逃げる。そして、Uターンして来た時が危ない。 ライオンも蹴り殺せる脚力から俺は逃げる。 攻めては逃げ、攻めては逃げの繰り返し。 刻々と日にちは過ぎて行く。 早くダチョウを乗りこなすまでに成長しないと教授が復活してしまう。 俺は、焦った。 俺の夢まであと一歩の所まで来ているのにタイムリミットが近づく……。 飛び乗った瞬間に上手く羽根が掴めれば、きっと! 何度も何度もチャレンジする。 もちろん、合間にサブへの求愛ダンスを踊る。 俺の愛がどれほどのものかサブに愛を唄う。 そして、その日はやってきた。 サブがのんびりと俺に近づいてくる。俺は脚立の上で固唾飲んでその瞬間を待ちわびる。 サブが背中を見せた。油断MAXの状態だ。 千載一遇のチャンスが俺にやってきた。この時とばかりにサブの背中めがけてジャンプした。 俺は、サブの背中のやや後方に飛び乗ることに成功し、そして両羽根をしかっりと掴む。 「やったぁ!」 思わず歓声が上がる。その声に驚いたのか、サブが走り出す。 俺は、サブの上に乗り風を切る。 ついに長年の夢が叶った瞬間だ。 感激のあまり涙があふれてきた。涙で前が見えない。 サブは、檻の中を縦横無尽に走り回る。 涙で濡れる瞳の端に何かが写った。 そして、フォーカスを合わせると車イスに乗った教授が檻の外にいた。 「教授、俺はやりました!ダチョウ乗りに成れたんです。ダチョウへの愛が叶いましたぁ」 サブの羽から手を離し、喜びのガッツポーズをとった。 「あっっっ!」 そこにいたすべての生きとし生ける者の視線が、ダチョウから落ちてゆく俺に集まる。 そう、サブも俺を見ていた。 サブは、俺が落ちた後、急激なUターンをかまし俺に向かって走りこんだ。 そして、サブの強烈なキックが俺を空へ舞い上がらせた。
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