警告状

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難関と言われていた志望校には無事に合格し、俺は春から関東の大学へ進む。 日中日夜、呪いのように付き纏っていた「受験勉強」からようやく解放されたのだ。とはいえ、入学の手続きや新居の契約で毎日は忙しい。 そんな三月のある日、俺はある女の子からメッセージを受け取った。なんだか、懐かしいほど久しい名前だ。 『合格おめでとう!やっとまた遊びに行けるね!いつ空いてる?』 『ありがとう。でもまだ準備とか手続きでバタバタしてて、今はちょっと無理かな』 『そうは言っても……。交換してた本、お互い引っ越す前に返さないとだし、一日くらい大丈夫でしょ?』 ひたすら勉強に打ち込んできたせいで、「誘いには何かしらの理由をつけて断る」という癖がついてしまっていた。でも今はそんな必要もないのか。 『まぁ、そうだな。日程はなんとかする。どこ行きたい?』 『私ね、本屋に行きたい!半年くらい前にできたところ、オシャレで好きなんだよね。一度は君と行きたいなぁってずっと思ってたの。それに、次に書く小説の舞台にしたいから取材も兼ねて』 彼女は小説を書いているんだっけ。そうだったか、前に言ってたミステリーの話は完結したのかな。凍らせていた記憶が少しずつ溶けていく。 『じゃあそこにしようか』 そんなわけで、俺は彼女のために丸一日を取り分けた。 彼女というのは、近隣の学校の同級生だ。SNSで知り合い、何回か「デート」をした。とりわけ恋人なんて名前の関係でもなく、しかしお互いにとって特別な感情を持つ異性であったことは確かだ。今もかと言われればどうだろう、あまりに時間が経ってしまった。ここしばらくの間、俺は受験勉強に打ち込んでいて彼女と会うことをしていなかったのだ。時々送られてきていたメッセージも、そういえばほとんど返していなかった。最後に会ったのはいつになるんだろう。誰もいない公園で彼女が作ってきた弁当を食べた猛暑日……あの日になるのか。あれからもう半年以上も経ったんだな。
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