After story/カプチーノとカフェオレ

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あの時も思ったけど、時間が経つのはとても早く 感じる。 それが楽しければ楽しいほど。 毎日一緒に居るのに、奏さんと過ごす時間に飽きる ことはない。 何でなんだろうって考える。  でも、結局行きつく答えは一つなんだ。 「時間が経つのはあっと言う間だね。」 店内に飾ってある時計を見上げて、奏さんがポツリ と呟く。 それは今正に私が思っていたことと一緒で、何だか 胸の奥がくすぐったくなった。 ふっと奏さんは小さく笑いを溢す。 「あの時は雨が降ったことに感謝したよ。」 「え?」 「僕は、ひまりさんともう少し一緒に居たかった からいい口実が出来たんだ。」 知らなかった。 奏さんがそんな風に思っていたなんて、あの時の 私には想像も出来なかったこと。 そっと目を細めた奏さんはどこか懐かしそう。 「私も、同じ気持ちでした。 だからお家に誘ってもらえた時は嬉しくて。」 私も雨に感謝したことを思い出した。 あれ以来、疎ましく思っていた雨が少しだけ好きに なったのは秘密。 それを聞いてふわりと柔らかく微笑んだ奏さんは 言う。 「そろそろ帰ろうか。」
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