After story/ホットミルク

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After story/ホットミルク

はぁっと息を吐いたら白く煙った。 そんなに大きな神社ではないけれど、やっぱり 大晦日のこの時間になると賑やかになるのは日本 らしいなと思う。 鳥居をくぐる前に一礼。 慣れない草履での砂利道にそうっと歩き出そうと したらごく自然に手を包まれる。 「ゆっくり行こう。」 と、ふわり微笑む奏さん。 今日も藍色の着物がよく似合ってる。 参拝に来ているどの人よりも素敵に見えてしまう のは旦那様に対する私の贔屓目なのかな。 「ごめんなさい。慣れなくて。」 「謝ることはないよ。とても似合ってるから。」 さらりとそういう言葉を口にしてしまうところは今も変わらない。 そしてそういう言葉に相変わらず照れてしまう私。 こうやって着物を着るのは成人式以来だから、少し そわそわした。 でも二人揃って着物を着て初詣に来る夢が叶って 嬉しい気持ちの方がずっとずっと勝ってる。 ゴーンゴーンと除夜の鐘を聞きながら手を繋いで 参道を歩く。 いつも以上にゆっくり、一歩一歩歩幅を狭めて私に 合わせて歩いてくれる奏さんの手は手袋越しでも 優しい。 ───温かい。
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