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もうこれで、奏さんとは二週間会ってない
ことになる。
それは胸の中にポッカリと穴が開いてしまった
ような寂しさを私に感じさせた。
でもきっと、これでいいんだ。
奏さんからもらった手紙にも、返事を書けないで
いる。
───いつか、この辛い気持ちが消えて
何ともなくなる日がくるのかな?
そんな日はこないかもしれない。
だったら、もう二度と会わない方がいいんだ。
私が金曜日にシャーロックへ行かなければ、もう
奏さんに会うこともない。
そう、会えないんだ。
私のことを"ひまりさん"って呼ぶ、低くて柔らい
声も、"じゃあ、また"って去り際に微笑む
あの優しい顔も二度と見ることはない。
そうやって無理やりにでも自分の中から
消してしまわないと、ずっとずっと残ってしまう。
その週の土曜日───
気づいたら無意識にあの窓際の席のテーブルを
拭いてる自分が居て、思わず苦笑した。
こんなんで、消せることが出来るのかな?
奏さんが来るはずのないその席のテーブルから
離れようとした時、カランカランとドアのベルが
鳴った。
「いらっしゃいま…せ…」
私の視線の先には、会いたかったけど会いたく
なかった人の姿が。
その人は、私をじっと見つめると…
「ひまりさん。」
と、大好きな声で名前を呼んだ。
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