不ぞろいな神様たち

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「もしもし?僕だよ、西洋の神ですけど」  少し間をおいて、電話口の向こうから低く野太い声が聞こえてくる。 「お前か…突然何の用だ」  それは中東の神だった。この2人の神をめぐって、何世紀も前から地上では人間たちの争いが絶えないのだ。 「実は、かくかくしかじかでさ……僕は死ぬことにしたんだけど、君も同時に死んでくれないかな?僕らが一緒にこの世からいなくならないと、世界情勢的には意味がないかなって」  数秒の沈黙が流れる。そうして、中東の神はゆっくり重い口を開く。 「お前がさっきかくかくしかじか言ってた地上からの願いごとだが、それ、俺の耳にも届いてたんだよ……。そして俺も、同じことを考えてはいたんだ」 「なんだ、じゃあ話は早いじゃん。早いとこお互い人間界に行って、やることやりましょう。レッツ自害」 「いやいや、ちょっと待て。お前もしかして、そうやってお互い自殺しようとかそそのかして、自分だけ生き残るつもりだろ」 「はあ?そんなことある訳ないじゃん。だって僕、神様だよ?そんな卑怯なまねする訳ないし」 「いーや、西側の神はあてにならん。ゼウスだって、若い女見つけては不倫しまくってたような奴だしな」 「あの人はちょっと特別だし宗派違うし……でもそこまで疑うんなら、とりあえず人間界で合流して、それで一緒に自殺しよう。そしたら問題ないだろ?」 「うむ……土壇場でお前が何かしでかす可能性がないわけじゃないが……とりあえず、人間界で合流するところまでは少なくとも付き合ってやってもいいだろ。それでお前が何か企んでたら、その場で見破ってやるからな」  西の神は満足げに、また中東の神は仏頂面のまま、それぞれの受話器を置いた。  翌日。  日本海を臨む、北陸のある駅前。晴れ渡ったロータリーに、人間になった西の神が立っていた。カジュアルなブルゾンに、ジーパンにスニーカー。どこにでもいそうな、男子大学生風である。  おお、久方ぶりの人間界。天界から常に様子は見てたけど、実際に降り立ってみると結構発展してるもんだね。一人こう思いながら、彼はちょっとした旅行気分に胸が高まる。  興味深そうにあたりを見回していると、改札の方から一人の小さな影が近づいてくる。
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