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内心、戸惑いながらも、私は辺りを見てみる。
だが何もいない。
いるはずがない。なのに、なぜか私の耳の中に声が入りこみ、語りかけていた。
「ほら、そんなところにいないで、早く行こうよ」
「あ、うん」
そう言いながら妹は私の腕を引っ張り、学校にへと向かう。
けど私自身、その声が嫌という程気になってしょうがなかった。あの言葉に一体何の意味があるんだろうと、誰が言っていたんだろうと思いながら、学校にへと足を進めていた。
「おはよう……って、また遅刻寸前か」
私は妹に連れられ校門前に経つとそこには、ジャージ姿の男性教師がいた。
「おはよう、てっちゃん」
「お姉ちゃん! すみません。青河先生」
「あぁ、いや、大丈夫だ。竹鳥姉妹」
てっちゃんは怠そうな事を言いながら私たちのことを見てきて、手に持つボードに何か書き込んでいく。
「遅刻扱い?」
「……あぁ……本当はな。…………だが今回は妹の鳥海の顔を立てといて無かったことにしといてやる」
「本当ですか!」
やったぁ、とそんなことを思いながら私は妹と顔を見合わせながら喜びの表情を見せるが、最後にてっちゃんは、悪魔の一言を落としていく。
「あぁ、だが次回は無いがな」
先程までの喜びもその一言で一瞬にして消え去り、絞首台に近づいて来る悪寒が背中に走る。
「本当ですか?」
「………言わんほうが良かったか?」
「良かったねぇ」
青筋を垂れ流している妹にたっちゃんはいとも簡単に突き付けてくる。
最近読んだ小説にはマフィアが後頭部に銃口が付きつけられる、と言う描写があったが、こういう気分なのだろうか?
「ま、こんな所でボーっとしていないででさっさと教室行けよ」
「りょーかーい」
「わ、わかりました」
私たちはたっちゃんに言われるがまま、昇降口にへと向かい教室に向かう準備をし始めた。
そのような事をしながらも私の妹は今すぐにでも倒れそうな程の表情をしていたが、私は何も気にしないでその場を去った。
途中で妹と別れ自身の教室に向かい、遅れました~と軽い感覚で言いながら教室の扉を開ける。
それを見たクラスメイト達は一瞬だけシーンと私の方にへと見つめてきていたが、すぐさまに元通りの騒がしい教室にへとなる。
いつもの教室に、平和だなと思いながら先程はひやっとした感触があった。遅れて入る教室とは多くの人の視線を集め、静かな空間を生み出すため平常心を保っていてもあの視線には半ば耐え綺麗な私がいる。
「……ふぅ」
背負っていたセカンドバックを下ろし、机の横にへと掛けると、バックの中から筆記用具を取り出す。
朝一の授業の準備を終えると、私はそのまま呆けた顔で窓ガラスに映る外の風景を眺め続ける。
空は水色に染まっており、一目見ただけで天気が良いのが良く分かる。
だが、そのような日であろうとも今日は不思議な出来事が嫌という程、あったなと思い始める。
不思議な夢、登校中の謎の声、そして妹の急な体調の変化。
最後は何も不思議な事では無いものだが、どちらにしろ。私でなくとも妹には嫌な事だろうから、私にとって不思議なことに近い。
「結局の所、不思議なだけで明日には何も変わっていないでしょ」
そんな呑気な事を言いながらも、鳴り響く授業開始の鐘を聞いていた。
本当に神様がいるのなら、あれが一体何のか教えてくれるのだろうか?
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