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単純な私は、読んでもらうことがどれだけありがたいことかも忘れてせっせと書き続けた。私の書くペースが速くて、大親友が「ごめん、まだ読めてない」て言っていたのに、「早く読んで! 続きはもう書けているから!」と何度急かしたことだろう。
それがどれだけ彼女の負担になっていくかもわからずに。
読んでもらえることの貴重さと嬉しさがマヒしていた私は。
急かしながら書き、急かしながら書きを繰り返して。
――高校1年の、夏。
大親友は変わらず読んでくれていた。
私が作り出した、どこにでもあるようなファンタジーの世界を。
どんな内容のものを書いていたかは、今の私はもう覚えていない。
覚えていないのは、忘れたい記憶で、もう思い出したくないからだろう。
だからこの先の記憶はとてもおぼろげだ。平和だったはずの記憶は、もう、ほとんどない。
――……時が無を刻んで、高2の、春。
大親友が自殺した。
最後のやりとりのメールは、短く一言。
「もう読まない、じゃあね」
私はそれがショックで「何それ急に、大嫌い」と返した。
泣いて泣いて、もう二度とメールを開かなかった。
けれどその2週間後に彼女の訃報を聞いた私は、急いでメールを開いた。
「助けて」
「やっぱいいや」
「ごめんね」
大嫌い、と送った後にすぐ来ていた返信に、私は気づかなかったのだ。
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