プロローグ

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 どうして?と理由を聞くためにメールを開いたらこのメッセージに気づいただろうに、私は「読まない」という言葉がショックすぎて一切開かなかった。  彼女がどれほどの思いでこのメッセージを送っていたのかも知らずに。  自分にとって、彼女の存在がどれだけありがたくて大切でかけがえのないものか、私は失ってからその大きさに気づいたのだ。  どれだけ後悔したか。  どれだけ泣いたか。  どれだけ自分を責めたか。  私はこの日を境に執筆をやめた。  読んでもらえるありがたさを知らない私なんかいらないと。  ――でも。  私は、また筆を持っている。  やっぱり書く楽しさが忘れられなくて。  頭の物語が形になっていく(さま)が何よりも嬉しくて。  私は。  結婚をして、子どもに手がかからなくなった28の年に。  0からのスタートを始めた。
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