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「神様、神様、何卒、何卒お願いします!」
「神様、神様、どうか世界をお救いください!」
終末の世界、人々はもはや神に縋ることしかできなかった。
自らの誇った機械文明、自らの誇った統治機構、自らの誇った食糧生産、それらを作り上げるために、人は神を否定した。神の力などもういらぬと、自らの力のみで生きていけると。
神は認めた。あなたたちの好きにしてみなさい。だけど、あなたたちを助けることはもうないと。
人々は歓喜した。
神の手を離れ、好きに出来ると。確かにそれは上手くいった。人は神などいなくても、祈りなどしなくても、人は確かに発展した。
だが結局、人は自らの文明で自らを滅ぼした。
核兵器、温暖化、人工ウイルス、致命的な原因は分からない。だが、確かに人間の文明が、神を否定した文明が人を滅ぼそうとしているのだ。
そして今、人間は神に縋るしかないところまでに来ていた。
「かつての奇跡を、神が与えてくれた奇跡を、今もう一度」
そんな一心で人々は祈り続けた。
そして遂に、祈りは神に届いたのだ。
「かつてのように神殿を作りなさい」
人々は歓喜した。
残された人、材料、全てを動員し、人々はまたかつての神殿を作り上げた。
あとは神様が何とかしてくださる。人々は今か今かとその時を待ち続けた。
そして遂にその時がきた。各地の神殿が強く光輝いた、地球が明るい光に包まれていく、魚が、植物が、森が次々に息を吹き返していった。
人々は歓喜した。
蝶がたわむれる。
人々は歓喜した。
小鳥がさえずる。
人々は歓喜した。
魚が跳ねる。
人々は
逃げ惑った。
すべてが蘇る中、人だけは光に包まれると姿を消した。皆が悟った。神に騙されたと。神殿の光から追い立てられ、人々は遂に最後の時を迎えた。
誰かが叫んだ。
「何故、こんなことをする!! あんなに祈ったのに!!」
天から声がした。
「何を勝手なことを、責任をとるのは当然でしょう」
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