第一章・―その仕事を始めた理由―

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 そんな正反対な反応を見せた二人を一通り観察していた元同僚だったが、やがて何やら一人で納得したのか、うんうんと頷いている。 「……時間も惜しいんでな。俺達はもう行くが。お前、明日は捜査に参加出来るんだろう?」 「あ、うん。明日は行くよ」 「じゃあ新谷君、私達はこれで失礼するよ。明日からまた、宜しくね」 「はい。宜しくお願いします」  二人が通り過ぎた後、店から出るのを確認した様子の元同僚が、何故か俺の肩に手を置きながら、訳知り顔で再び頷いた。 「お前が営業辞めた理由。めっちゃよく()()ったわ!」 「……え? 今ので()()った? マジで?」 「まぁな。伊達に営業やってないぜ」  だろうな。この元同僚、一緒にいた時は「マジで俺のために転職して?」って懇願するくらい、万年営業成績二位だったもんな。  対人関係スキルの高さと、相手を見る目は抜群だろうし、これで説明してみる手間が省けたわ。  いやぁ。元同僚が一人で勝手に納得してくれて、本当に良かった。  俺が刑事に転職した理由。それは本当に複雑怪奇で、他人には即座に説明しにくい事情が含まれているのだけれど、まぁこれで()()ってくれたんなら、取り敢えず良いかな。  さて、元同僚との、会食という名目の飲み会は、まだまだこれからなので、今からちょっと店移動して、飲み直そうかな。  店員さんにお勘定を告げて立ち上がると、元同僚も財布を懐から取り出して言う。 「次は奢れよ」 「はいはい。分かった。奢りますよ」  こうして元同僚と飲み明かす夜は更けていくのであったーー。         ーー了ーー
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