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思い返してみると、わりと早いうちに人類は地球上からいなくなった。
だが、完全にいなくなったのはいつだったかは思い出せない。
あるとき、地球を一掃するような人為的な惨事が起こった。それは僕の生まれた時代でも、いつか起こりうると予想されていた出来事だ。
人間の起こした大惨劇は人間の数をどんどん減らしてゆき、さすがにもう人っ子一人もいないだろうと思いきや、どこからかまた増えてくるのがまた人間だった。
その都度、国の形が変わり、民族は入り乱れ人種差別の概念が無くなったのは唯一メリットだったのかもしれない。
あまりに人間を見なくなってくると何でもいいから生き物が恋しくなるもので、なるべく大きな動物を探しまわった。生きて動き回るものを見かけると、同志に会ったような気持ちになる。
嬉々として近づいてみると、たいてい死ぬ思いをする。だが、死んだと思ってもふと目が覚め、体も元通り。これはとっくに検証済みだ。ずっとその繰り返し。繰り返し。
動物に挑むだけでなく、毒虫に刺されてみたり、食べてみたり。けっして滅びない体を使ってありとあらゆることをしてみた。人間はいなくなっても、動く生命体がいること自体が素晴らしい。ただただ生命に触れることが嬉しかった。
ふと気付くと面白いことが起きていた。
植物や虫が巨大化していた。太古の風景ってこんな感じだろうかと思った。
空気中の酸素の量と生き物の大きさは比例するって、どこかで聞いたことがある。きっと人がいなくなったおかげで植物が生い茂り、地球が大量の酸素で覆われたのだろう。
これからまた進化が巡り、いつか人が現れるんじゃないかという希望すら感じたのも束の間。太陽がみるみる大きくなり、そして今に至る。
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