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まさかの異世界に召喚されたんですが
目を開けるとそこには、黒いフードを目深に被った怪しい人影が蠢いていた。
奴らの背景に見える空は、暗灰色の厚い雲に覆われており、稲妻が走っているのが見えた。枯れた木々が風に揺られ、カラスがけたたましく鳴きながら忙しく飛び回る。不思議と、いつも空を見上げればそこにある筈の、高層マンションの影は見えなかった。やたらと眺めがいいな、なんてことを俺はぼんやり思っていた訳で。
奴らは、揃って俺を覗き込んできた。なんだこいつら?ヤバい信仰宗教かなんかか?まさか俺、ヤバめの奴らに拉致られたりしてる!?
俺の脳内がようやく動き出し、今の状況を案じ始めたときだった。奴らが揃って声をあげた。
「・・成功だ!勇者の召喚に成功したぞ!」
「予言は本当だったんだ!」
・・なんだ・・夢か。
勇者の召喚って、オイ。漫画や小説でよくある、異世界転移ってやつ?転生じゃないよな、俺死んだ記憶なんてないし。
どうりでこの風景、魔女とか出てくるファンタジーの世界みたいだもんな。こんな夢見るなんて、俺にもまだ少年の心みたいのが残ってるのかもしれない。
俺を覗き込んでいた1人が、黒いフードをとった。
「・・私達は貴方様をずっとお待ちしておりました。
神よ、感謝致します。
私は、アデルハイド。このエストニアの王女でございます、勇者様・・」
そう、目に涙を溜めて、俺に笑顔を向けた女の子、結構、いやかなり、可愛かったな。さすが夢の中の王女様、俺の好みドンピシャだ・・
再び朦朧とする意識のなか、俺はそんな事を考えていたー・・
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