二代目

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 ある日、天使が神様にこう言いました。 「神様、お願いがあるのですが」  神様は天使をちらりと見て首を左右に振りました。 「嫌じゃよ、ペック。お前さんのお願いはロクなもんじゃない。どうせまた、金髪イケメン青年として地上に降ろしてくれとか、そんな事じゃろ?」 「違います神様。僕はパックです。ペックは銀髪でしょ?」 「何じゃと……そうじゃったかな?」 「ああ、神様。僕が来たのはその事でお願いがあるからです」  パックは神様のすぐそばまで、その小さな羽で飛んでいきお願いしました。 「お願いです神様。一度検査を受けに行ってください。最近の神様は、どうも僕達天使を間違え過ぎです」 「うーむ。そもそもにすぎていると思うのじゃが……」 「だとしても、前は間違えていなかったでは無いですか」  天使に涙ながらに懇願された神様は、休みの日に病院へ行きました。  付き添いは、神様の息子がしました。 「すまんな、息子よ」 「いえいえ、良いんですお父さん。たまには親孝行しないと」 「ありがとう。お前も忙しいだろうに。けど、今回は珍しく自分から付き添いを名乗り出てくれて嬉しかったぞ」 「そんな、僕だって心配しているんですから」  神様は息子の優しさに目頭が熱くなる思いでした。    やがて、神様の検査結果が出ました。  認知能力にやや疑いがあるという結果でした。 「ううむ、何と言う事じゃ」 「ああ、お父さん。気をしっかり持ってください」 「人々の住む世界を支え、健やかに保たねばならん神の身でありながら、自らの体のケアを怠っていたとは不覚の極み」 「ご安心くださいお父さん。僕がいるでは無いですか。お傍でサポートいたしますよ」 「おお、ありがとう息子よ」  その日から神様は二人体制になりました。  初めのうちこそ神様のサポートに徹していましたが、段々と仕事を覚え始めると仕事を任されることも多くなっていきました。  それをいいことに、息子もどんどん神様のやり方に口を挟むようになっていきます。  そしてある日。息子は神様に言いました。 「神様、お願いがあります」 「何じゃ?」 「そろそろ、引退をお考え下さい」 「なんじゃと?」    息子からの爆弾発言に、神様は思わず飛びあがりました。 「神様の最近のご判断は、間違いが多いように思います。これは正常な判断が出来なくなりつつあると言う事ではないでしょうか」 「いや、しかし……」 「神様、お願いします。まだ僕の顔が分かるうちに。皆から心配と懸念の目を向けられる前に、引退をなさってください。今であれば、皆は神様の功績をたたえ、笑顔で送り出してくれましょう。ですが、このまま神様の症状が進めば、やがては石を持って追われる事にもなりかねません」 「うむむ……」  神様の顔には苦悶の表情が浮かんでいます。  確かに、息子が力をつけてきているのは神様も感じていました。  やがては後継者となる息子ですが、まだ早いようにも思われたのです。  ですが、神様は最近自分の判断に自信が持てなくなってきたことも事実でした。  天使達の中にも、息子の意見を支持する者が増えてきていたのです。 「分かった。退こう」    神様は長い間考えた後に、ぼそりとそう言いました。 「おお、神様。ご決断ありがとうございます。僕はあなたのその決断に最大級の賛辞を贈りたい!!」  息子は神様の手をがっちりと握り、涙ながらにそう言いました。  いつしか神様も泣き始め、周囲の天使達も泣き始めました。
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