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「食べるものを食べる分だけ買う。これが鉄則。溜め込まない。それだけで、いつでも新鮮なものが食べられる。食べ物を無駄にする心配も、健康を損なう恐れもない」
大学時代からの友人である草野には生真面目さの漂う文字列で説教された。動画を見つけて呆れたらしい。
俺は自分で動画をUPしていてさえ、「動画を見る」習慣がないから、世の中に本当に「友達が出ている」ことに気付く奴がいるとは思わなかった。良い子のみんなは気を付けような。
トークアプリに浮かんだ文字を見て、俺は素早く打ち返す。
「そうはいっても、日本の賞味期限の基準はかなり厳しいっていうのは最近結構な話題になって、見直されてきているよね。表示も日付から年月単位に切り替わりつつあるし。そもそも、ペットボトルの水に刻まれた日付は『便宜上』で、雑菌なく密閉された状態であれば本来賞味期限なんかないらしいよ。あの日付は、微妙にカサが減り始める時期の目安だって聞いたことがある。あとは缶詰。日本の基準では36カ月表記が推奨されているけど、破損しなければ半永久的に持つとも言われているし。あんまり長い期間表示にすると『保存料がたくさん入っている』という勘違いが先行して避けられるから、ほどほどにしているメーカーもあるとか」
一応、調べてはいるんだ。食べて大丈夫なのか。大丈夫だとすれば、あの日付の意味はなんなのか。
店では撤去され、廃棄されているかもしれないけど、家庭に確保してしまえばそれをどうするかは買った側の自由のはず。たとえ期限が切れていても、「問題がない」ものは思った以上にたくさんある。
「やめればいいのに、ああいうこと。ネガティヴなコメントもずいぶん……」
見なきゃいいのに、優しい草野は俺の心配をしているんだろうか。
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