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全身を酷く打ち付けた事に加え、辺りに散らばっているささくれだった木の板が身体のあちこちを刺す。
「痛い……。」
その痛みは身体のあちこちが骨折した時の痛みに似ていた。
肋骨、脚、腕…
動くことが出来そうにないくらい折れているらしい。動かそうとすれば激痛が走る。
けれど息はしっかりできるから肺は傷付いてなさそうだ。
─ああ、崖から落ちたのか。
冷静に今の状態となぜそうなったのかを考える。
おそらく雨が強く降っていたせいで、元々地盤が弛んでいたのであろうこの崖付近一帯が崩れ落ちたのだ。
雨宿りした場所が悪かったんだな。
もっと周りをよく見ておけば良かったのだろうけれど、そんな暇も無かった。
ここへ来る前に雨雲には気付いていたが、すぐに雨避けに出来そうな場所はこの森には無かった。
建物を探す為に早足で歩みを進めていると人気の無さそうな小屋を見付けた。
所々穴の空いた、風通しが良すぎるくらいの小屋。
雨を凌ぐくらいなら問題は無い。
そう思って近付いた。
どう見ても傷んだ木に慎ましくある引き戸の取っ手。少し開けるのに躊躇する見た目だった。
流石に人は住んでいないだろうが、はたしてこの戸は開くのだろうか。
そんな迷いは雨雲を思い出す事で掻き消された。
開けなければ雨は凌げない。
建て付けの悪い戸を開くようにガタガタと軋んだ戸を揺らしてみる。
ガタンと大きな音を立てながら開いた戸は随分長い間開けられていなかったようで、もうもうと埃が舞った。
丁度その時を待ち構えていたかのように大粒の雨が降ってきて、まだ埃が舞っているそこへと潜り込んだ。
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