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「私、自分の欲の為に、最低ですよね……」
「違う!人間だった時ってどういう意味ですか?」
神はハッと口に手を置いたが、もう黙っている必要も無いと気づいて話し出した。
「建国当時、小さく弱いこの国は不安も多く、それを払拭する為に【神卸し】という秘術を行う事になったんです。
天界から神の力を人間に宿らせる術で、私はセプティノと呼ばれ、神の力の宿主候補として育てられました。
他の候補者もいて、彼らとは友だちだったんですよ。みんな死んでしまいましたが」
神は今にも泣きそうに笑う。
「神卸しが成功したのは私だけでした。そして、私はずっとこの力で、この国の人々の祈りを祝福し続けてきました。みんなの分も。それが私の役割ですから……なのに……」
神はーー神の力を宿した少女は、ポロポロと泣き出した。
「私、羨ましかったんです。家族や恋人の事で悩む人々が。私はそういう感情を持ってはいけなくて。でも、願ってしまったんです。貴方のお母様のように、貴方のお父様のような人が現れて、外の素敵な世界へと連れていってくれる事を……」
キースは少しためらってから、少女を抱きしめた。
「神様、いや、セプティノ。君の中にも君の神様がいる。だから、信じて。誰かが君を連れ出すんじゃない。君の足で出ていくんだ。その為の協力なら俺はする」
キースが腕を緩めると、セプティノはキースを見上げた。
「本当ですか?」
「俺のできる範囲で、だけどな」
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