神の守り人

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◆ しばらくして、キースの母親は亡くなった。 その数日後、キースは早朝に1人で神の寝所に行き、神の胸に剣を突き刺して神を殺した。 それがセプティノの願いだったから。 他の守り人が来た時にはキースは立ち去っていた。 胸に剣が突き立てられ、息をしていない神を前に守り人たちは愕然としていたが、そうしている間に神はチリとなって崩れて消えてしまう。 キースは目撃されていなかったが、神殺しとして捕まり、死刑が宣告された。 「キース。汝を神殺しの罪により、絞首刑を執行する」 国王の宣言。 手首は背後で縛られ、足首は歩ける程度の幅で繋がれ、腕ごと胴を縛ったロープで引きずられるようにキースは歩く。 台の上の所定地に着くと、2メートル程の高さに作られた木の(はり)から垂らされたロープの輪が首に掛けられる。 キースは空を見上げながら、大きく深く、息を吐いた。 そして、息を思い切り吸うと、足元の仕掛け板が開く前に力強く床を蹴る。 首に気をつけながら空中で反転し、足首のロープを頭上にあった梁に引っ掛け、梁の上に身体を持ち上げる。 観衆も兵士も呆気に取られていたが、掛け声で絞首刑台にいた兵士2人が剣を振る。 キースはタイミングを合わせて梁を軸に身体を2回転させた。 キースが梁の上に身体を戻した時、上半身を縛っていたロープは切れて床に落ちる。 手首と腕が開放され、首に掛けられたままのロープを外す。 足はまだロープで繋がったままだったが、キースは梁から台に飛び降り、足にロープがある状態で、集まって来た兵士4、5人を軽く倒す。剣を奪って、足も解放した。 そしてその剣を次々集まってくる兵士たちに向ける。 この国の兵団は弱い。 キースも戦闘に合わせた訓練はしていない。ただ、山で1人でも生き残れる為の体力・筋力は身につけているだけだ。 それでも、キースの強さに対して、「何回祈ればそれぐらい強くなれるのか?」と聞いてくるような連中に、キースは負けるつもりはなかった。 剣で殺さない程度に蹴散らしながら、キースは街の外を目指して走り出す。 だがその途中の噴水広場で足を止めた。 魔法部隊に待ち伏せされていた。 既に大きな攻撃魔法が用意されていて、出現した業火がキースに向けて放たれた。 噴水もベンチも跡形も無く燃えさり、キースの姿も無くなっていた。
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