神の守り人

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◆ 早朝4時少し前の神殿。 キースは神の前に立った。 「神様、本日より後帯(あとたい)の守り人に着任します、キースです」 「よろしくお願いいたします」 先輩の守り人に紹介され、キースは頭を下げる。 「こちらこそ、よろしくお願いいたします」 神は女性を思わせる高い声で言った。 金の刺繍の入った真っ白いローブに全身を包み、冠のような形の帽子からは全方位にベールが垂れている。顔にはこれまた白い仮面が付けられ、中の姿形は全くわからなかった。 声から神は女なのか、そもそも神に性別があるのか、とキースが考えていると、神が声を掛けてきた。 「貴方が私の所に来たのは一度だけでしたね。その時も祈りの言葉はありませんでした」 『一度だけ』という言葉にキースは驚いたが、先輩たちの方が驚きが大きく、声を荒げた。 「祈らない人間なんているのですか!?」 「そんなんで【守り人】が務まるのかよ!」 言いたい事はいっぱいあるようだが、民との謁見の時間が迫っていたので、問い詰められずに済んだ。 謁見は謁見室にて朝4時から夜22時までの18時間、1人5分のみ与えられ、休み無しで行われる。 神は食事も取らなければ、休む必要もないらしいが、『人間は夜は寝るもの』として、夜22時から朝4時までは謁見の時間を取っていない。 神へ直接的に願いを伝えられ、【祝福】を受け取れる謁見は、常に人が詰めかけており、神殿の受付にて毎日抽選が行われ、落選者たちは祈りの間で【祝福】が与えられる事を祈るのだ。 守り人は3人1組で神の寝所から護衛を始め、謁見の間ずっと側におり、寝所に帰って別れて終わりになる。 守り人たちは普通の人間なので、4時間半置きに交替が入る。 午前枠の前後と午後枠の前後に分けており、後帯勤務のキースは午前枠の後半と、午後枠の後半が担当だった。 初日だけは、午前枠は見学として参加し、午後枠の前半に休憩を入れて、午後枠の後半である17時半から任務に当たった。 そして、特段何が起きるわけでもなく1日が終わる。
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