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その日から、キースと神との秘密のおしゃべりが始まった。
「俺は国の外れの山奥で育ちました。父の死により、母の故郷であるこの街に帰ってきたんです。生前、父は猟師をしており、山で生き残る為の全てを父から教わりました」
「山は危険な所なのですか?」
「危険もありますが、恵みもある良い所ですよ」
神の問いに、キースは少なからず違和感を覚えていたが、それを口にはせず問いに答えた。
「両親の間で【神様】という存在は全く違っていました。この街出身の母は、神様1人だけを崇拝し、毎日この神殿の方向へ祈りを捧げていました。しかし、他国出身の父にとって【神様】は1人ではありませんでした」
「神様が複数いるのですか?」
「というよりは、すべてのモノに神が宿ると言いますか……」
キースはどう説明したらいいのか、また【神】本人に言っていいのか迷う。
でも、神は興味津々で言葉を待っていたので、父に教わった通りに伝えることにした。
「すべてのモノ、鳥や猪、木や花、川や石、そして人間一人一人にもそれぞれの【神様】が宿っているのだと父は言っていました」
「人間一人一人にも……」
「はい。俺にも、先輩たちにも。自分のしている事は、自分の中の神様がすべて見ている。頑張れば頑張っただけ神様は与えてくれ、悪い事をすれば報いを受ける」
神はその言葉を聞いて、ほぉっと熱に浮かされたような息をつく。
「……深い言葉ですね」
「……そう言っていただけると嬉しいです。父と母は【神様】の話をする時は、いつも別々で、一緒に話した事はありません。
どちらの【神様】が正しいのでは無く、信じたいモノを信じれば良いのだと、そして信じるモノが違う者同士はその話はしない方が良いと、俺は学びました。」
「そして、貴方はお父様の神様を信じたのですね」
「現状は今までの自分の行いの結果で、欲しい結果はこれからの自分の行いで決まる。自分で運命を作る感じが気に入ってます」
神は納得してうなずいてから、首を傾げてキースに聞いた。
「私の中にも神様はいるでしょうか?」
「……あなたが神様じゃないですか」
「そ、そうですよね!」
神は笑って誤魔化し、キースは追及しなかった。
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