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どうやらその男は、字を書くのが好きなようでした。そのため兄は、彼に天啓を授けていったことを、私にだけ伝わるよう、書置きを残してくれていました。
「妹へ
私を赦してほしい。1つだけ、君に遺す。彼には日記を与える。彼が日記を書き続ける限り、彼は己が命を自身で絶つことを企図しない」
問題はこの後で、
「日記の条件は以下の通り。
記録媒体はコクヨ社製のキャンパスノートに限り、B5サイズB罫の30枚または40枚、型番でいうところの『ノ-3BN』または『ノ-4BN』に限る(ただし型番変更が行われた場合はこの限りではなく、指定のものに準じたノートの利用を可とする)。
1日1ページを使用し、意味を持った判読可能な文章で1,000文字以上書くこと。
別のノートへ移行する場合は、移行前のノートの再利用は不可とする」
兄は兄で面倒なのでした。
なぜこんなところでハードルを上げようとしているのか、私には到底理解できないのでした。
それはあまりに簡単すぎる天啓を授けることをよしとしない、生真面目さなのかもしれません。
しかしそもそも兄は人間が老化することさえ考慮に入れなかったのか、この後私はこれまでで最も長いと感じた50年をその男と過ごすことになったのです。
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