4/4
前へ
/7ページ
次へ
 遠くへ離れていた神が一瞬のうちに男に距離を詰めた。牛車に乗り込み、男を包み込むように撫でる。 「あい分かった。真の願いが見付かった時にわたしに祈れ。けど、一つ約束だ! 体も心も壊れてしまいそうな阿呆な生活はやめるんだ。いいね。穏やかに暮らせ。さすれば、汝の願いを叶えん……」  神の声が遠のいていく。  そうして、男は屋敷の自室で目を覚ました。家の者達は皆そろって「昨日は普通に帰って来たよ」と言う。牛飼童も、牛も、どこへも消えてはいなかった。やはりあれは夢であったのだろうかと男は首をひねる。珍しく悩んだ様子の男を見て、家の者達も首をひねるばかりだった。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加